2021-01-01から1年間の記事一覧

締めつけるような寒さの中、僕は何を思いリュックを背負って歩いているのだろう。 2021年も今日で最後だ。毎年この日、人々はその1年のことを振り返る。変わったことと変わらないこと。新しく出会った人と別れた人。なぜ人は今日という日に過去1年間を振り返…

おわりのはじまり

一年が終わりに近づくにつれ、無性に人に会いたくなる。テレビ番組も街中も年末モードで賑やかになっているせいだろうか。街の灯りひとつに、ひとつの幸せがあることを最も感じる時期だからだろうか。それとも、今年も独りのまま終わらせたくないからだろう…

季譚

四季は、それぞれ違った匂いがする。そのどれもが好きで、季節の移り変わりにふと風の匂いが変わったのに気づくと、毎年新鮮で凄く嬉しい気持ちになる。そしてその度に、どこか遠くを見つめるあなたの横顔を思い出す。 春の包み込まれるような暖かさとぬるい…

23億回

今日も人は、人の間で生きている。誰かが人を褒めている間に、誰かが人の悪口を言っている。誰かが言い訳をしている間に、誰かが本当の気持ちを伝えている。誰かが死に物狂いで働いてる間に、誰かが一日中ゲームをしている。今日も人は、人の間で生きている…

蒼穹

僕がもう死にたいと思った時、必死になって生きる理由を見つけることがある。それがたとえどんなに下らないことであろうとも、僕にとってそれは、小学生にとっての夏休みのような、大地にとっての雨のような、輝きと潤いを与えてくれる大事なことだった。あ…

燃胞

この文章を書くとしたら、きっと真夜中だろう。久しぶりに、希死念慮がやってきた。突然出てきたのではなく、必死になって押さえ込んでいるだけで常に僕の心の表面で眠っているこの思いが、目を覚ましただけだった。機械が初めて心を持った時のような、希望…

手癖

今この世界に存在する言葉だけで僕の本当の考えが伝わるのなら、どうかその方法を教えてくれ。 路上で歌う若い男の横を通り過ぎ、ポツポツと光る都会の灯、閉まるスターバックス、残業終わりらしき沢山のスーツたちに囲まれ、無味乾燥な電車に揺られ、でかい…

山荷葉

僕が人のために泣いたのは、君が初めてだった。 結局眠れなくて、パソコンを触っていたら朝五時になっていた。小鳥が街に一日の始まりを教え、淡い碧がカーテンの隙間から顔を覗かせる。また、時間を無駄にしてしまった。まあ、いいか。僕の時間にはそんなに…

椿にナイフ

何も上手くいかなかった日の帰り道、とある若者の集団の大きな笑い声を聞いて、ふと、全ての人間が無理になった。 人間は、身体も、精神も、脆い。宇宙上最悪の肉体で、宇宙上最弱の精神で、僕たちは生まれてしまった。まだ世界の何も知らない頃、僕たちは皆…

瑪瑙

冬の雨は、寒くて、痛くて、誰の身体にも纒わりつかない、冷淡で孤独なものだった。 今、私は、誰にも見られることがないこの文章を書いている。社会のルールとか、身に付けておくべき常識とか、他人を軸にした価値観も、他人によく見られようとして習得した…