とある夢の話

ふと、冷たい風が首もとを優しく撫でました。

秋の夜長にピアノの調律を流しながら、あなたのことを想いました。ふかふかの白いベッドが、雲のように私を包みながら、7%のアルコールに揺られて、月明かりの微睡みから夢の中へと誘われました。無臭の夢の中であなたは、薄い光となり存在しながら、尚もあなたの形を保ちながら、私に抱かれるのです。眩い光に包まれて、羊水の中にいるかのようなぬくもりを感じながら、私たちは安心していられるのです。外では学校帰りの小学生たちが、縁石の上を渡りながら、はしゃぎあうのです。ここは幸福の世界。何も案ずることはないのです。

何もしなくていい、何もしなくていいから、眠れない夜に一緒にいてほしいのです。気を抜いたら死んでしまいそうなので、どうか手を離さないでほしいのです。たとえあなたのすべてが嘘でも、私と一緒にいてくれたらそれでいいのです。

目が覚めて、太陽が地平線に位置するその瞬間に、月は私から隠れてしまうのです。