雪那

今日も薬を飲んだ。自分で自分の世話をするのに精一杯だ。毎日連絡を取る相手はいない。毎日も話すことがないからだ。それでも連絡手段はいつまでもあって、"友だち"一覧からその名前は消えない。アイコンが私に微笑んでいる。本当に微笑んでいる相手は私ではないのに。ボタンひとつで、いや指一本の静電気でこの笑顔は消える。

そうやってつかず離れずの関係ばかり増えていく。

たまに連絡はするけど会うのは億劫。嫌いなわけではないけど死んだら永遠に悲しむわけでもない。一緒にいたら楽しいけど自分の本当の淋しさを埋めてくれるわけでもない。

そんなことを思っているのは、あなたも同じですか?

それともこれは、私だけですか?

夏の雨はやまない。

 


ところで、目を閉じていても私たちは雨を知ることができる。それは雨粒が窓や地面に当たって鳴る音を、あるいは雨が地面に染み込んで香る匂いを感ずることで知覚している。しかし私たちは雪という音のしないものをも知覚できる。それはむしろ雪があらゆる雑音を吸収し、世界から音をなくした結果、"無音"という音を発するからであろう。雪とはまさに、孤独を以て孤独を制す存在。だから私は雪が好きだった。以前、夏に降る雪の話を、私は小説に書いたことがあった。気温のせいでそれは積もらない。視認はできるが存在を確かめる前に消えてしまうその儚さに、自分を重ねていた。雪よ、あなたは今、どこにいるのですか。