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カーテンの隙間から差し込む朝5時の光。カラッと晴れた日の紙の匂い。テレビを見ながらすするカップラーメン。誰もいない街のイルミネーション。マジックアワーの東京と人々。誰かと一緒に見た空の色。

今年も人が死んだ。数え切れないほどの。

人は死ぬと、その人の考え、価値観、記憶、意識が消える。それは一つの"世界"が失くなるのと同じ。そうして失くなった"世界"はやがて生きている人々にも忘れ去られ、二度目の消失を迎える。忘れるとは、この世で最も残酷なこと。

「絶対行こうね、一緒に」

ふとあの人の言葉を思い出した。あの約束、まだ覚えていますか。それとも覚えているのは、私だけですか。茫漠の砂漠に取り残された約束の亡骸が、私から涙を奪っていく。それでも私は、その亡骸を腕に抱えだきしめるのです。ずっと、ずっと、この身が朽ち果てようとも。